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第3回失語症? 認知症? その鑑別のポイントは

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はじめまして。「実務で復習! PT・OT・STの国試過去問ドリル」言語聴覚士編を担当することになりました、東京都言語聴覚士会 言語聴覚士の近藤晴彦と申します。大学を卒業後、回復期リハビリテーション病院に十数年ほど勤務しています。若い言語聴覚士の方々に実務から得られる生の情報を、言語聴覚士国家試験の過去問題を通してお伝えできればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
さて、さっそく今回の問題の解説に入っていきましょう。
 

過去問題【言語聴覚士】

第13回 午前55

失語症と認知症の鑑別に役立つのはどれか。

  1. 1. 意識レベル
  2. 2. 書字の能力
  3. 3. 計算の能力
  4. 4. 言語性記憶
  5. 5. 視覚性記憶

解答

正解:5

■解説
失語症と認知症はともに、話す、読む、聞く、書く、計算などの力の低下を認めることがあります。またときに、意識障害を認めることもあります。
認知症では言語性課題、視覚性課題ともに低下を認めますが、失語症では言語性課題に比べ視覚性課題が良好であるので、回答は「5.視覚性記憶」となります。

◆実務での生かし方

臨床現場では失語症と認知症の鑑別は非常に難しい問題です。今回の試験問題のように「失語症なのか?」「認知症なのか?」(失語症or認知症)といった鑑別だけでなく、

  1. ・失語症と認知症が合併した症例(失語症&認知症)
  2. ・認知症に失語症が合併した症例(認知症&失語症)
  3. ・原発性進行性失語(PPA)のように失語症状が主だった症状である認知症(失語症→認知症)

などと鑑別することが必要となります。

では、どのような視点で評価を進めるのか、どのような検査を実施するのか、症例を通してご紹介しましょう。

事例

82歳 女性
左中大脳動脈領域(左頭頂葉)の脳梗塞で入院。歩行可能。発病24日目に介入。理解は、簡単な指示は可能だが複雑な指示は困難である。発話は文レベルで話すが、喚語困難や「きのう/テレビ/みた」などの電文体を認めた。
ときに「しんぶん」→「しんびん」、「トイレ」→「タンテ」などの誤りを認めた。

■解説

状態から判断するに、言語症状があることは間違いなさそうですね。この患者さんは失語症なのか認知症なのか。それともその合併なのか……。
これらを鑑別していくことがポイントになります。まずは言語症状からみていきましょう。

自発話をみると、喚語困難、電文体が認められます。また聴覚的理解障害も認められます。「以上により失語症!」と思われますが、これらは認知症に伴う言語症状でも認められます。第2回で説明された認知症の検査であるMMSEやHDS-Rの項目に呼称課題や語列挙、文章の書字課題があることからも推測できますね。
また、誤り方を観察してみると音韻性錯語や新造語が認められます。これらは伝導失語やウェルニッケ失語の特徴です。本例の患者さんは左頭頂病変でもあるということなので、伝導失語が疑われます。これにより、「認知症ではなく失語症の疑いがある」と考えられます。

次に認知機能をみていきましょう。認知症との鑑別のため、また認知機能の評価のためにはどの検査を行うとよいでしょうか。
ここでは言語性の全般的知的機能検査であり、簡便にできるレーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)が適しています。その結果、9/36であり、認知機能の著しい低下を認めました。

「以上より認知症が……」と言いたいところですが、それだけではこの患者さんが認知症であるとは言い切れません。なぜなら脳梗塞急性期であり、通過症候群ともよばれる意識障害による影響が否定できないからです。ではどうするのか?

ここからは患者さんに関する情報収集が必要です。
病前の生活の様子や現在の病棟生活の様子を家族や看護師に聴取したり、実際に生活の場面に出向いて評価を行ったりすることが重要になります。
情報収集の結果、家族からは「数年前から物忘れがあり、最近ではお金が盗まれたと言うようになった」、看護師からは「病棟を周回している」「床頭台におしぼりを大量に入れている」などの情報がありました。
病前より物忘れに加え、物取られ妄想なども認められていたということは、アルツハイマー型認知症であった疑いがありますね。

以上より言語症状、検査結果、行動所見を合わせて評価をすると、元々のアルツハイマー型認知症に今回の脳梗塞で伝導失語が生じた、認知症に失語症が合併した症例、すなわち「認知症&失語症」の症例と評価できます。

失語症と認知症の鑑別は、臨床では非常に難しい問題です。検査結果だけを見て判断するのではなく、周囲からの情報を含めて総合的に評価することが必要です。

中山 奈保子

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

国際医療福祉大学卒業後、回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会 広報局所属。

東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。
活動内容や入会のお問い合わせはこちらから。
http://st-toshikai.org/


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